青い文学シリーズ 第10話

「書けたのか。走れメロスは。」


 今までの中だと一番この「走れメロス」が好きになれました。


 情熱的で、感動的で、現実さも色濃く、偽りの無い描写。純粋にそのままの、繕いのない心の声が、直接行動を引き起こしている。原作に沿った形で、こうしてちゃんとオマージュできている。何よりも美麗な描写の数々が、魅力を底上げしているように思いました。

 先生が激しく執筆するそのまさに机上で、メロスが同じく激しい戦いを強いられている。あんな描き方ができる作品自体が、もう今はないように感じてしまい、心掴まれました。

 そして先生のところへ電報が届いてからの一連の「走る」様は、圧倒的でした。劇中劇と並行して描かれた先生の心中。どうしてきてくれなかったのか。どうしていってくれなかったのか。なぜもっと早く。なぜ苦しんでいたのか。彼は親友ではなかったのか。自分が取っていた行動はじゃあなんだったのか。
 相手を想っていれば、理由を見つけることは容易だったかもしれない。何か理由があるとは思っていても、それを「言ってくれない」というもどかしさのようなものは、彼から切り開くことは、どうしてもできなかった。そこには彼なりのプライドがあっただろうし、親友なら、という意地もあったかもしれない。

 彼は最期。先生からの「走れメロス」のラストを聞き、涙していました。そこにどれほどの刻や感情が込められていたのか。言葉にはできないから、彼は泣いていたのかもしれないな。。


 待ち続けることと、待たせることと。どちらも相手を信じることができなければ、苦痛にしかならない。けれどどちらも、相手を信じること、信じきることができるのであれば、そこにはさらなる信頼が生まれる他ない。

 探していたものは最期になって見つかったけれど、まだ"ここから"見るべきもの、得られるものはある。
 継ぐことこそが、彼への次なる信頼を証明することに繋がることとなるのだと思いました。


 作品自体も本当に素晴らしかったですが、やはりキャスティングは切っても切り離せないと改めて実感しました。深さが違いました。これをもう少しボリュームつけて映画、でもいいんじゃないかな。。


 きっと次作からまた元に戻ってしまうのだろうけれど(>_<) 宮野さんもいらっしゃるようなので楽しみにしています。

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太宰 治

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