四月は君の嘘 #13「愛の悲しみ」

愛を失わなければ進めないのだとしたら、そんなに悲しいことはない。


 公生君が音が聞こえなくなるという現象。それはつまり「音に束縛されなくなる」と同義。瀬戸さんのその言葉に、まさに光を感じた公生君は、一人演奏を続ける中で、水の底で光を見出しました。

 母との別れ。母の亡霊は、公生君が生み出していた幻。つまり母はずっとずっと、彼の中にいました。彼のあらゆる言動が母の面影が残っており、原動にもなってしまっていた。
 母の、母親としての愛。その愛の形が彼女が唯一見つけ出した、限り在る、あまりに限りある時間の中でできた指導でした。彼を一人残すことが明確だったからこそ、彼になんとしても生きてもらいたい、生活に困らないようにしてあげたい。その一心で彼女は公生君にピアノを教えていました。他にももっともっと心配なことはあったのだけれど、すべてを擲って、ピアノだけを教えてくれた。子に対する親の愛、それしか込められていませんでした。

 ピアノは抱きしめるように弾くもの。彼は水の底から光を感じ、己の体から音を感じ、音を紡ぐことができました。聞こえる音ではなく、生み出す音を感じることで彼は演奏ができるようになった。そしてその音は、母にも確実に届き、と、同時にそれは別れを意味していた。
 音楽で出会えた感動、人、想い。彼が歩んできた道は音楽の道。音楽での道。すべては音楽に通じており、その音楽こそが彼の道。

 そして今の彼をそうさせたのは、そう導いてくれたのは母の愛であり、母との別れでした。

 もしもその別れが、子としての彼にとってはつらい出来事でしかなかったとしても、音楽家としての彼にとっては望むべき出来事だったのだとしたら、こんなに悲しいことはない。望む未来は、失わなければ得られないなのだとしたら、その未来に果たしてどんな価値があるというのか。
 彼は再び、失おうとしているのか。


 ラストの場面は戦慄が走りました。そんな残酷な未来もまた、選択肢にあったのだとするなら、何が救いで、何が幸せなのか。全くわからなくなってしまった。
 それと椿ちゃんの心の変化もかなり気になるところでした。彼女が抱いていた想いは、かをりちゃんのこれからとどうリンクしていってしまうのか・・・

 
 



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